会長挨拶

 国家としての生存は、国益の中でも最も基本となる死活的なものです。国家の安全と生存なしには、経済の繁栄も国民の福利もありえないことは、言うまでもありません。しかし、戦後の日本では、その当たり前の現実が意図的に忘却させられてきました。憲法前文に書かれた、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持」するとの建前のもと、自らの力により自国の生存と安全を確保することを怠ってきたのです。しかしもはやそのような甘えは許されない時代に来ていることは、明らかです。

 戦争放棄をうたった憲法第九条を守れば平和が維持できるというのは、全くの虚構です。戦後これまで日本が平和を享受してこられたのは、日本自らの自衛力と日米安保条約に基づく米軍の圧倒的な軍事的優位により、侵略が抑止されてきたためです。しかしいま、その力のバランスがくずれようとしています。中国の軍事力増強は、人類史上例を見ない規模と速度で行なわれています。米国の国力は中国に比べかつてほどの優位を失いつつあります。北朝鮮は米大陸に届く長距離核ミサイルの開発に成功する直前にまできており、ノドン・ミサイルは日本全土を狙っています。平時からの戦いといわれるサイバー攻撃や情報戦は、すでに日本に対して毎日のようにしかけられています。

 他方日本の国力は、少子高齢化と人口の減少、財政赤字の累積、年金問題、経済競争力の低下、さらには東日本大震災以降の原発停止によるエネルギー問題の深刻化と貿易赤字など、衰退の兆しを見せています。このような日本の国力衰退の兆候に乗じて、中国は尖閣諸島に対する不当不法な領土要求を実力を背景にして突きつけ、韓国も反日的言動を執拗に唱えるまでになっています。わが国はいま幕末や敗戦直後に匹敵する危機に直面していると言って過言ではありません。
英国の著名な歴史学者であるアーノルド・トインビーはかつて、こう述べています。「指導者が無能なら指導者を替えればよい。しかし国民は替えられない。一国の国民が公徳心を忘れ劣化すれば、国家は衰退するしかない」。いまの日本で最も欠けているのは、国民自らが国家の運命を我が事のように思い、国家公共のために献身するという精神です。

 日本はかつての大東亜戦争において、特攻隊まで繰り出して戦った歴史を持つ、他国に類のない愛国心と尚武の気風に富んだ国でした。しかし敗戦後、占領軍は国際法を踏みにじって、意図的に憲法や教育基本法を変え、日本が二度と脅威にならないよう、日本人から愛国心や尚武の気風を奪ったのです。その負の遺産はいまもマスコミ、教育界などに継承され、占領軍の虚構の正義に追従し地位を築いた、偽りの権威者、権力者が日本の世論やものの考え方、世界に対する見方を支配しています。

 もう彼らの妄言に惑わされてはなりません。日本国民はいま目覚めなければ、奈落の底に落ちるしかないところまできています。当会の狙いは、これからの日本の国家としての生存戦略を多角的な視点からに訴え、世論を啓蒙し、日本国民から奪われた健全な愛国心、国防意識、公徳心を取り戻すことにあります。当会の力はささやかですが、多くの人々の共感を得て、その輪が広がり、これからの若い世代のために、祖先が守りわれわれの世代に継承してくれた、すばらしい愛すべき日本が引き継がれることを祈念しています。一人でも多くの方のご賛同とご協力をお願い申し上げます。

国家生存戦略研究会会長 矢野義昭 拝

国家生存戦略研究会